最近、ワインの紹介文やラベルで「ナチュラルメソッド(Natural Method)」という言葉を見かけることはありませんか?
「自然派ワインのこと?」 「オーガニックとはどう違うの?」
実はこの言葉、特に日本ワインの世界においては、少し特別な意味合いを持って使われることが多いのです。
今回は、日本の気候風土と向き合う造り手たちの「工夫」と「哲学」、そしてナチュラルメソッドがもたらす味わいについてお話しします。
日本ならではの「栽培」と「醸造」の関係
世界的な基準では、「ナチュラルワイン=完全無農薬または有機認証農材(オーガニック)のブドウを使うこと」が前提とされることが多いです。 しかし、雨が多く湿度の高い日本では、完全な有機栽培を行うことは極めて困難です。病気からブドウの木を守るために、最低限の農薬を使わざるを得ない地域も少なくありません。
そこで、日本の多くの造り手たちは、「栽培」と「醸造」を一度切り離して考えることがあります。
たとえ認証の取れる完全オーガニックではなくても、農家さんがこだわり、苦労して育ててくれたブドウ。 「そのブドウが持つ個性を、醸造の過程で損なわないようにしよう」 「蔵(セラー)の中では、人為的な介入を極限までなくそう」
この、醸造(造り方)における自然尊重の姿勢を指して、「ナチュラルメソッド」と呼ぶことが多いのです。
「足さない、引かない」という技術
一般的なワイン造りでは、安定した品質のために培養酵母を使ったり、味を整えるために補糖・補酸を行ったりすることがあります。 しかし、ナチュラルメソッドではそれを行いません。
- 野生酵母での発酵 その土地、その蔵に住み着いている「野生の酵母」の力だけで発酵させます。コントロールが難しい反面、その土地ならではの複雑な香りが生まれます。
- 無濾過(ノンフィルター) 旨味成分や、ワインを守る澱(おり)をあえて残します。
- 添加物を極限まで減らす 酸化防止剤なども、必要最低限、あるいは無添加で仕上げます。
これは「何もしない」のではなく、「ブドウ本来のポテンシャルを信じて、余計な操作をしない」という、高度な判断と衛生管理が求められる手法です。
農家からの「タスキ」を、濁さずに繋ぐ役割
ナチュラルメソッドを選ぶ造り手たちは、自分自身を「ワインという作品を作る芸術家」ではなく、「ブドウというバトンを受け取る第二走者」だと捉えていると。
日本の厳しい気候の中で、農家さんが雨や病気と戦い、手塩にかけて育てたブドウ。 そこには、土地の記憶や、作り手の想いと苦労が染み込んでいます。
醸造家にとって「ナチュラルメソッド(余計な手出しをしない)」を貫くことは、その重みのある「タスキ」を預かる覚悟を決めることでもあります。
- 自分のエゴで味付けをしない
- ブドウの個性を、ありのまま次へ渡す
もし、そこで醸造家が過度な味わいの調整をしてしまえば、農家さんから受け取ったタスキの色は変わってしまいます。 そうではなく、受け取った「個性」を「輝く状態」で瓶に詰め、私たち飲み手まで無事に届けること。
それが、「醸造家の役割(ナチュラルメソッド)」なのです。
私たちが飲むのは、リレーの「ゴール」
日本ワインを飲むとき、それは単なるお酒を飲んでいるだけではありません。 畑から始まり、醸造家の誠実な手仕事によって繋がれてきた「ゴール」を味わっているのです。
「体に染み入るようだ」「飲み疲れない」と感じるのは、そのリレーが、どこでも途切れることなく、スムーズに、そして純粋に繋がれてきた証拠なのかもしれません。
日本のナチュラルメソッドを体験する
彼らのワインを一口飲めば、理屈ではなく、感覚で伝わるはずです。
「これが、日本の土地と人が織りなす味わいなんだ」
そんな感動に出会いに、ぜひイベントにも遊びにいらしてください。 スペックや難しい理屈は抜きにして、ただ純粋に「美味しい日本」をご案内いたします。

