10月中旬、東京は少し肌寒い日、山形上山市は晴天で猛暑。
小高い丘の頂上で朗らかにお話をしてくれたのは
ベルウッドヴィンヤード代表取締役 鈴木 智晃さん
今回はベルウッドヴィンヤードさんの魅力と特徴について
- 遊休農地を開墾した絶景のぶどう畑
- 契約葡萄の農家さんとの関係
- Sense 醸造 プロモーション
- 日本ワインとナチュール
以上を少し雑談もふまえて書かせていただきました。
- 遊休農地を開墾した絶景のぶどう畑
山形県上山市久保手の田畑の中にお洒落なワイナリーがあります。
周りには田圃が広がっていて見晴らしの良い傾斜地にぶどう畑があり、
小高い丘のぶどう畑は元々遊休農地だった所を借り、ヨーロッパ品種を植えていったそうです。
もう一方の奥畑には元々生食用の棚仕てデラウェアが植わっていた所があり、開業当初はそのデラウェアを
醸造してリリースしていたのですが、今は新しくソーヴィニヨン・ブランに植え替えていらっしゃるとのことでした。
高低差は約4m程、垣根と垣根の間は2,5m 丘になっているので斜面が四方に伸びている特徴があります。
太陽の光を遮るものはなく、風通しも良好で恵まれた畑の北斜面にはピノ・ノワール、ピノ・グリ、
ソーヴィニヨン・ブランを南斜面にはメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンを植えています。
少し離れた所ではデラウェアも育ているそうです。
伺った時期はカベルネ・ソーヴィニョンとメルローがほぼ完熟で、鈴木さんのご厚意で味見をさせていただきましたが、びっくりするほど甘い!メルローの果皮が滑らかでほろ苦い、「うまー」と丘の頂上で叫んでしまう位でした。
カベルネ・ソーヴィニョンも甘さがしっかりと出て、果皮は嚙み応えがあり、香りの余韻が長く感じました。
ベルウッドヴィンヤードさんの自社葡萄は完熟遅積みで仕上げるので、糖度も高く、酸度もしっかりして、ポテンシャルがとても高いんです。
この辺りの土壌は粘土質が多く、傾斜のない場所では水はけが悪く、斜面栽培が適していて、平地栽培は溝切りで対応しているが元々田圃でどうしても水が残りやすいそうです。
垣根には雨よけと防虫ネットを設置し、病果を防いでいて、9月後半からは契約農家さんからのぶどうも届き、醸造がはじまります。一日の大半を醸造所で過ごす為、ぶどう達には自然に任せて、美味しくなれー美味しくなれーと願うのみだそうです。
醗酵管理、栽培、醸造、基本お一人で作業され、奥様にも手伝ってもらいながらの家族経営。
故の忙しさと、ぶどう畑に対して必要最低限の手入れとたっぷりの愛情のバランスが鈴木さんの
ワインらしさなのだと感じました。
- 契約葡萄農家さんとの関係
ベルウッドヴィンヤードさんは契約農家さんからの買い葡萄でもワインをつくっています。
山形といえば日本で一番デラウェア、マスカットベリーAを育てていて、特に久保手はデラウェアの名産地
です。
デラウェアの収穫時期は8月から9月上旬。その頃は秋雨が降り始め収穫や畑作業に影響がでてしまいます。種無し加工のジベレリン処理を行うと発育がよく一週間ほど早く収穫出来、種無しぶどうの食べやすさもあって多くの農家さんは種無しを選びます。種ありデラウェアはワイン用としてお願いして栽培してもらっているのが現状です。
農家さんの高齢化とシャインマスカットなど大粒種無しぶどうの流行りにより、どんどんデラウェア栽培を辞めて方が増えている一方、ワイン用ぶどうに切り替えている農家さんも増えてはいるそうです。
しかし、地域でワイナリーや加工業者と繋がっている方はしっかりと買ってもらえるが、そうではない方は何処に売ればいいか分からない、育てても受ける窓口がないなどで、ぶどうの木を切らざるを得ない農家さんもいらっしゃるとゆうこと。
ぶどうの買い付けも間に農協や買取業者が入るとぶどうのクオリティは上がるのですが、加工用=多少傷んでてもいいだろうと勘違いされる方もいて個人契約での買取には大きなリスクがあるのも事実だそうです。
昔はお土産用の町民ワインのイメージだったデラウェアですがと、今は日本ワインの主力として、白、オレンジワイン、スパークリングなどマルチにそしてクオリティの高い品種として注目されています。
「山形のデラウェアワインが多くの人に好んでもらえたら、今以上に買取ぶどうのクオリティは上がるでしょうね。そしたら農家さんもやる気でますよねー。」と今後の地域全体の活性化を願う鈴木さんのコメントに素直にデラウェアのワイン沢山飲もう!って感じちゃいました。
皆さんはいかがでしょうか?
3,Sense 醸造 プロモーション
ベルウッドヴィンヤードさんのワイナリーが黒を基調とした外観に内装はウッドパネルむき出しの木調仕上げで、ショップ内はキャンプグッズが並べられ、おしゃれなんです。
ただご自身ではキャンプはされないようで、「毎日、畑にいたらキャンプしたいなーはないですねー」と納得の答え。
内装はウッディファーム&ワイナリーの木村社長にお願いしての同じ内装屋さんに依頼したんですって。
木調が似てるなーと思っていたのですが、やはり!って感じでした。
ワインのエチケットにもこだわりが、自社畑、買いぶどうなどでレーベルを分けて、エチケット分けしています。お名前が「鈴木」なので「ベルウッド」モチーフに「鈴 ベル」が多用されています。
そのワインデザインとワイナリー、ヴィニュロンの鈴木さんの統一された雰囲気がグッとファン心を惹きつけてます。
ご自身のワインについてと聞くと
「勿論、美味しくなるように日々努めていますが、ジャケ買いで手に取ってもらって、尚且つ、味も気に入って貰える。そんなワインをつくってますかね」
ジャケも全部お洒落ですねーと僕が言うと
「全部デザイナーさんの才能です!僕は何もしてませんよ。」
と謙虚なコメントを頂きましたが、やはり鈴木さんの作るワインは味が良いんです。
すっきりした飲み口と果実味、まとまりのあるバランス感で味のセンスがいいのだと僕は感じています。
以前は19年間同県内のワイナリーで修行され、多くの知識と経験を重ねられて2020年に自社ワイナリーで醸造開始、ご自身で新しいワインを作りたかったと独立され、無濾過で綺麗にまとまったワインんを多く醸造されています。
ほかのワイナリー関係者からは「メルローの魔術師」と呼ばれている鈴木さん。
伺ったタイミングでメルロー、ブラッククイーン、マスカットベリーAの醸し中で、プレス後
樽熟成を行いで、瓶詰めへ。同業者が羨むメルローの仕上がりに期待しています。
新作のリリースが待ち遠しいですね。
4,日本ワインとナチュール
近年、コロナの影響もあってか、日本ワインがちょっとしたブームになっていると僕感じてるのですが、
鈴木さんに率直に今の日本ワインについてお伺いしてみました。
ベルウッドヴィンヤードさんは2020年コロナ禍のオープンでだったので、
「ブームの影響なのか、自分の頑張りの結果なのか判断が出来ないですねー。」と。
年々、認知度が増え注文数も伸びてはいるのも需要と生産量が単純に比例していて、周りで起きている
大きいムーブメントの実感はないそうです。
上山ワインの里プロジェクトという地域おこしの取り組みがあり、新規ワイナリーが増えています。
着々と若い生産者が就農していく流れはありますが、その分競合が増え価格がおきます。
国内、県内、地区内で細かな競争が起きて、海外産のワインの値上げに準じて同じラインでどう
選んでもらえるのか、どんな物語を届けるかが大事になっていくでしょうね。
実感としては「ナチュール」が大いに盛り上がっているなという印象で、その流れに乗った日本ワインが一気に品薄になったかな?と思います。日本ワインの中でもナチュールの基準はまだまだ曖昧で、
亜硫酸をいれた入れないの話だけではなく、湿潤亜熱帯気候の日本にあった独自の「ナチュール」区分がきっと必要なのかなと思っています。しかし今すぐ出来ることじゃないですし、実際の日本ワインブームが起きる為には「味」「見た目」もそうなんでしょうけど「物語」ですよね。
伝え方がいまいちだと「物語」が届かないし、飲みたいと思わせることが出来ない。
「物語」を上手に発信して行くことがこれからの日本ワインの大きな鍵になりそうですね。
まあうちは広報も居ないので、気に入ってリピートしてもらえるとありがたいですね。
と朗らかに語っていただきました。
今の日本ワインブームの現状と、増える新規ワイナリー、高齢化するぶどう農家さんなど、突っ込んだ話を色々伺ってしまいましたが、鈴木さんの率直なお答えを頂き僕自身の知見を広げる事が出来ました。
改めまして大変お忙しい中、ご対応頂きありがとうございました。
ショップは予約なく伺えるようですが、お一人で作業されているのでお話を聞かれる際は事前連絡をおすすめいたします。