「牡蠣に合わせて楽しむワイン」
震災復興から生まれた新しいワイナリー。
地元の魅力をワインにのせて全国に届ける新しい挑戦に注目です。
今回の訪問は宮城県南三陸にある「南三陸ワイナリー」
10月22,23日に開催された「ワインツーリズムさんりく2022」に参加させていただきました。企画の発起人で代表取締役の佐々木道彦さんとワインメーカーの正司 勇太さんに南三陸ワイナリーについてお伺いしてきました!
- 南三陸ワイナリー
- つくり手さん
代表取締役 佐々木 道彦さん
震災により荒廃した地元を復興する強い気持ちで、長年勤めた大手楽器メーカーから転職し、猛勉強して南三陸ワイナリーを立ち上げた佐々木さん。
「南三陸の海の幸は山から注ぐたっぷりの養分を蓄え、味が濃くなっている。合わせるというより、ぶどうも海産物も同じミネラル、栄養分が循環している。」という考えで食事とワインを合わせて楽しめるワイナリーを設立。
地元にワイン文化の定着を広め、全国に南三陸の魅力をワインで発信されています。
ワインメーカー 正司 勇太さん
2017年から南三陸地域街おこし協力隊着任後され、南三陸ワイナリープロジェクトの発足メンバー。ワインが大好きで、全国数か所で勤務され、南三陸ワイナリーで醸造家として活躍されています。
2.地域・風土
●ワイナリーのふるさと●
南三陸ワイナリーのある宮城県本吉郡南三陸町は宮城県北東部三陸海岸南部に位置し、田束山と童子山、志津川湾に囲まれた自然豊かな町で、狭い湾が入り込んだリアス式海岸で有名。
東日本大震災による津波で大きな被害を受け、今も復興、防災、減災に取り組んでいます。
南三陸町は町境が全て分水嶺(雨が降った際、雨がどちらに注ぐかの境目)に囲まれているのが特徴で、山と通った栄養が海へ流れていくことで魚介の養殖が有名。
●どんな気候なの?●
年間平均気温は11.4℃(日本全体は15.8℃)。三陸沿岸に位置するため、海洋の影響と地理的条件から夏が冷涼で、冬は温暖です。
「やませ」といわれる北日本特有の海上からくる低温で湿った偏東風が吹き渡る地域です。偏東風が続いた場合、夏の気温が上がらず、農作物に大きな影響を与える年があります。
年間降水量は1300㎜(日本全体は1720㎜)で、4月から10月までの降水量は990~1050mmで比較的少なく、積雪は平均10㎝で凍害はありません。
3.ワイナリーの特徴
●震災復興「南三陸ワイナリープロジェクト」発足●
2016年、仙台秋保ワイナリーから100本のぶどうを寄贈され、
2017年春,南三陸にぶどうを植え、将来的にワイナリーを設立するという「南三陸ワイナリープロジェクト」が始動。
すぐに入谷地区童子山に700本植樹し、3年間、秋保ワイナリーで試験醸造を繰り返し、ぶどう畑も徐々に増やしていった。
2019年には自社ワインの販売を始め、2020年には震災で無くなった水産加工所の再建を機に、仮設加工所を譲り受け改築。
念願叶って、海沿いに海の見えるワイナリー(醸造所、ショップ、レストラン)を設立しました。
●海に近いワイナリー●
目の前の海があり、ワイナリーに潮風が吹き込んでいます。
漁船が停泊する湾に面していて、地元漁師と協力し、海中熟成ワインなど試みを行っています。
併設レストランでは「食材と人と人を繋ぐワイン」の魅力を知ってもらえように特産食材を使った料理と自社ワインのペアリングの提案をされています。特産品の展示や水産加工品の販売も行っており、ワイン購入以外でも楽します!
●栽培・収穫の工夫●
①地域風土の異なる三か所に自社畑を所有している。
1・町内海側 標高500mの田束山山頂
2・町内内陸 標高300mの童子山中腹
3・山形県上山市平野部
- 積算日照時間が異なり収穫繫忙期をずらすことができる。
- 潮風の影響や土壌ミネラルが異なる為、様々な個性をもったブドウを生育できる。
- 土地に適応する品種を選別し、自然災害で収量が減ることを防ぐ。
②夜摘み「ナイト・ハーベスト」を行っている。
ナイト・ハーベストは日の出前に作業する為、ぶどうの温度が低温に保たれ、水分の吸い上げが起こらず、香りやうま味が凝縮し糖度も高い状態で収穫することが出来ます。
高品質なぶどうを収穫し、そのまま醸造できることで近年、日本でも行うワイナリーが増えてきています。
4.ワインの特徴
- 葡萄の品種
●食事に合わせた品種選び●
海鮮に合わせた白ワイン品種はアルバリーニョ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランの3種。すっきりとた酸味と華やかな香りをもつ品種を選別。肉に合わせた赤ワイン品種はメルロー、ビジュ・ノワール(※)ピノ・ノワール、カベルネソーヴィニヨンの4種。
※ビジュ・ノワール…:甲州三尺とメルロー、マルベックを掛け合わせた「黒い宝石」という意味の品種
●リアス式海岸とスペイン品種●
特に注目しているのがアルバリーニョ。
スペインの「リアス・バイシャス」は三陸地方のリアス式海岸の由来となった地方で、アルバリーニョの名産地。入り組んだ海岸と海の幸と山の幸に恵まれた共通項があり、日本を代表するアルバリーニョの名産地になるよう日々研究しています。
- 製法
●進化する醸造●
土地由来の個性を守りつつ、食事との相性を考え、思考錯誤しながら醸造しています。特産の牡蠣に合わせ、樽の仕様は発酵のみで、熟成はステンレスを使います。
基本に忠実で酵母の強すぎる香りや酸化作用が起きないよう細心の注意を払っています。
- 味わい
●海のワイン●
南三陸ワイナリーのワインは辛口ですっきり、香りとうま味もしっかりと感じられます。
牡蠣にレモンを絞るかのように酸味の表現が秀逸で、食材を引き立てる味わいになっています。
- ワインづくりへの思い、こだわり
●食事と一緒に楽しむワインづくり●
「南三陸の食材を引き立て、楽しみを提供するワイン」
栽培から醸造、販売まで一貫したテーマで特産食材と一緒に食べて飲む事で、「食」の楽しさと南三陸の魅了を発信し続けています。
- 今後
●自社畑原料ワインを増やす●
現在、まだ樹齢が若いですが、今後は自社畑原料が増えていき、今以上に南三陸の風土を表現していける事に大きな期待しています。収量を増やし、様々なタイプのワインを作っていく事でペアリングの幅を広げていきます。
●イベント開催●
ワインツーリズムや海中熟成ワイン引き上げイベントなどを行っていく事で、多くの人に現地へ来てもらい震災復興と地元の魅力を感じてもらえる企画を増やしていきます。
イベリコ豚ならぬ「いばり仔豚」!わかめ茎を与えて育てる「わかめ羊」や最高級養殖銀鮭「みやぎサーモン」など食材も個性のあるブランドが出てきています!食材はネットでも購入可能で、ワインに合わせて日本のリアス・バイシャス感じてみてください。
佐々木さん 正司さん 南三陸ワイナリーの皆様
ワインツーリズムの大変お忙しい時期にお時間いただき、誠にありがとうございました。
見学や来店される際は事前に連絡されることをおすすめします!
是非、南三陸ワインと海鮮を合わせてみてください!