なちゅまるの勉強ノート⑨|野生酵母発酵のリスクについて②

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なちゅまる
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「私、なちゅまるがお客様の質問や疑問にお答えする為、日々の学びを書き記していきます!個人的な興味とオタク心が強めですが、ご一読いただけましたら嬉しいです♪」

今回はある作り手さんとの会話のなかで、盛り上がった話題を掘り下げてみたいと思います!是非、最後までご覧ください♪

前回に引き続き、お題は

野生酵母発酵のリスクについて②

ワンバッチに使用する酒母の酵母数を顕微鏡で確認後、強い酵母を添加しても、最終的には速度が落ちるのか?

1. 酵母の増殖限界とストレス要因

  • アルコール濃度の上昇
    • 発酵が進むにつれてエタノール濃度が高くなり、酵母の生存率が低下します。
    • 一般的な野生酵母はエタノール耐性が低いため、10%を超えると増殖が鈍くなるものが多いです。
    • Saccharomyces cerevisiae のようなエタノール耐性の強い酵母を添加しても、既にストレスの強い環境では増殖しにくくなります。
  • 栄養不足(特に窒素源やビタミン)
    • 酵母の増殖にはアミノ酸やビタミン(特にB群)が必要ですが、発酵後半ではこれらが不足しがちです。
    • 窒素源(FAN: Free Amino Nitrogen)が不足すると、酵母がアルコール発酵を進められず、停止してしまうことがあります。

2. 酵母添加のタイミングの影響

  • 既存の野生酵母との競争
    • 途中で強い酵母を添加しても、すでに存在する野生酵母が優位にあると、新しい酵母がうまく定着しないことがあります。
    • これはキラー因子(killer factor)と呼ばれる酵母間の生存競争によるものです。
  • 発酵終盤での酵母活性の低下
    • 酵母を途中で補充しても、発酵終盤では環境が厳しく、活性が低い状態であるため、新しい酵母も活発に働きにくくなります。

3. 代謝の変化による発酵速度の低下

  • 発酵後半では糖の種類が変化
    • 初期の発酵では酵母が「グルコースやフルクトース」など単純な糖を優先的に消費しますが、後半では「マルトースやデキストリン」のような分解が必要な糖が残りやすくなります。
    • これらの糖は酵母が消費するのに時間がかかるため、発酵速度が遅くなります。
  • エタノール耐性の影響
    • 強い酵母を入れても、アルコール濃度が高いと細胞膜がダメージを受けて発酵が鈍化します。

解決策(発酵終盤の速度低下を防ぐには?)

  1. 窒素源(FAN)の補給
    • 酵母用の栄養剤(ジアモニウムリン酸塩やアミノ酸)を追加すると、酵母の活性が維持されやすい。
    • 特に発酵後半に不足しやすいビタミンB群やミネラル(亜鉛など)も補給すると効果的。
  2. 酸素の適量供給(エルゴステロール合成促進)
    • 酵母はアルコール耐性を高めるためにエルゴステロール(酵母の細胞膜を強化する成分)を必要とする。
    • 発酵途中で微量の酸素を供給することで、エルゴステロールが合成され、酵母のストレス耐性が向上する。ただし、過剰に酸素を入れると酢酸菌が増えるリスクがあるため、慎重に管理する必要がある。
  3. 糖のバランス調整(初期の糖組成を最適化)
    • 単糖類(グルコース)が早く消費されすぎないように、デンプン由来の糖の割合を適切に調整する。

結論

強い酵母を途中で添加しても、最終的な発酵速度の低下は避けられない可能性が高いことがわかりました。
ですが、酸素管理・発酵温度で糖の消費調整を行うことで、遅延を最小限に抑えることは可能でした!

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