Domaine Santamaria <ドメーヌ・サンタマリア>
Tranoï Blanc IGP Île de Beauté ‐ トラノイ ブラン IGP イル ド ボーテ
土壌:シスト
Memo:「Tranoï」(トラノイ)はコルスの言語で、フランス語では「Entre nous」、日本語で「ここだけの話だけど」という意味。
ラベルには「気」集めているような絵が描かれているが、トマ氏は陰陽の思考に興味を持っており、発酵槽にも太極図を描いている。
ドメーヌはコルシカ島北部パトリモニオ近隣の Oletta/オレッタに所在。
所有畑の面積は 20ha で、うち 13ha は AOP パトリモニオ。最大 30ha まで拡大可能だが、ポリカルチャー(複数の作物の栽培)を目指し、最終的にも 20ha 台でとどめておく方針。
同エリアの生産者の中でも、湖のすぐ側に畑があるという希少なテロワールが特徴。
この湖は Padula/パデュラと呼ばれ、農業用水の確保のために造られた人工湖で、26ha の広さがある。特に地場品種の黒ブドウであるニエルチオの区画は隣接しているため、湖の湿度がもたらす微気候の影響を受けていると思われる。
現在の当主は若き 6 代目のThomas Santamaria/トマ・サンタマリア氏。サンタマリア家は 1850 年からこの地で農業を行なってきた。ワイン生産は自家消費用が主だったが、5代目となるトマ氏の父親のジャン=ルイ氏の代に初めてミュスカを使ったワインの販売を始める。
もともと除草剤を使っていなかったが、2011 年から本格的なビオロジック農法を始め、2014 年にユーロリーフ認証を取得。2016 年からはボルドーのソーテルヌで修行を積んだトマ氏がワイン造りに参画し、いずれはビオディナミ農法に変換つもりでいる。
生産量の 90%が島内だった販売先を、国外への輸出を開始し、現在ではアメリカ、カナダ、スウェーデン、日本へと市場を広げた。
<栽培と醸造について>
ブドウ樹の大半は 1990~1993 年に植えられたもので(湖の建設とほぼ
同時期)ニエルチオ、ヴェルメンティーヌ、グルナッシュ、祖父の代に植えられた
平均樹齢 60 年のサンソーなどが植わっている。
2021 年にはリミヌーズ、カル
カジョロ・ネッロも新たに植樹した。
畑は大部分がシストで石灰質が混じる土壌だが、若干ある粘土が混じる区画にはグルナッシュを植えている。
特筆すべき点は、やはりパデュラ湖がもたらすミクロクリマ。ワインがしっとりした味わいになるなどの影響が考えられ、4月の遅霜に遭いづらく、暑い年でもブドウが焼けづらい。
とくに湖に隣接したニエルチウはブドウ焼けを恐れて未熟な状態で早摘みしてしまうと樽香のような香りが出たり、ザラついた渋みが出たりするのだが、しっかり完熟を待ってから収穫している。
仕立てがコルドン・ドゥーブル(ダブルのコルドン仕立て)となっているのも興味
深いところ。
平均樹齢 30 年なので、父や祖父の代からの仕立てだと思われる。
グイヨではなく誘因式のゴブレに近い仕立てで、熟練した技術が必要なこの方法は、特に右写真のような枝を交差させたタイプの場合、樹液の流れを妨げず、ブドウ樹への負担が軽減されるので、より病害や気候変動に強い丈夫な樹になるとされている。
地場品種を尊重し、楽な仕立て方法を選ばず手間の掛かるやり方を継続し、いたずらに近代化させるのではなく、高品質を目指し一貫した姿勢があ
ることがうかがえる。発酵はすべて自然酵母にて。
SO2 の使用量も最小限に抑えている。キュヴェの大半がステンレスタンクでの発酵熟成であるが、大樽やアンフォラにも興味を持っていて実験を重ねている。