Château Fontvert <シャトー・フォンヴェール>
Bulles Nature Rosé 2021 ビュル・ナチュール ロゼ
MEMO : ペティヤンナチュレル。ドライに仕上げているのだが、果実の甘みがある。泡のタッチが柔らかく、グレープフルーツの皮の部分のような苦味と酸味がかすかにある。酸は重たく太い。
AOP リュベロンは南ローヌの中でも最も東側のエリアでプロヴァンスに近い。プロヴァンス地方を横断してローヌ河に流れるデュランス川とその支流カラボン川の間に位置する。地中海性気候で日照時間が年間平均 2600 時間と長い。暑く乾燥した気候だが、このシャトーは大リュベロン山と小リュベロン山の麓にあり、冷たい風が対流している。
ブドウ畑 22ha を含むトータル 42ha の敷地内には、川が流れ込んでいて酷暑の時にも枯れることがないので、昔から動物の水飲み場になっていたという。Vert au font/
緑の土地と呼称されている。中世のころからユグノー派(プロテスタント)が住んでいたとのことでそれにまつわる塔が残っている。
1958 年からは Monod/モノド家が所有する。市長でもあり、ノーベル賞を受賞した生物学者でもあったオリヴィエ・モノド博士が購入し、1999 年からジェローム氏と息子のファブリス, ギヨーム、ドナタン氏が引き継いでいる。Michaël Renaud/ミケル・ルノー氏が栽培・醸造長を務める。
<栽培について>
2008 年にビオロジック認証取得、2009 年からビオディナミ農法に取り組み始め、2014 年にデメテール認証を取得している。ビオディナミの基本的な考え方となる生物多様性を重視していて、42ha の敷地のうちブドウ畑は 22ha はし、周囲にオリーブやトリュフのとれる林、その他の木々なども植樹している。
馬や羊なども飼育する予定。
ブドウ品種は、シラー、グルナッシュノワール、サンソー、ムールヴェ―ドル、グルナッシュブラン、ヴェルメンティーノ。
これらが石灰質、粘土質、砂質、砂質と石灰、粘土と砂質というテロワールにそれぞれ植わっている。基本的には石灰質にシラー、暑さに強いムールヴェドルを砂質、粘土質に白品種を植えているが、ユニークなのは各ブドウ品種の区画を一ヵ所にまとめていない点だ。
以下の写真のようにそれぞれの複数品種の区画がまとまって複数のエリアに
散らばっている。
これも生物多様性を重視するという姿勢に基づく。同時に天候不順によるリスクも避けることができる。霜害や雹などはピンポイントに襲ってくるので、各エリアに品種が散らばっていれば、どこかが襲われても別のエリアのブドウは助かる。あるいは干ばつの年でも、地下水脈の流れる畑のブドウは無事に育つ。
林に近くイノシシに襲われる畑には、イノシシが食べるためのムールヴェドルを外側に植えて、他のブドウが食べられないようにする。
駆除するのではなく、共生を目指す考え方だ。
平均樹齢は 35 年で、故意に収量を落とすことはしない
(それでも35hl/ha)。
<醸造について>
酵母添加が禁じられているビオディナミの醸造で、発酵をスムーズに行なうためには温度管理がもっとも重要と考えている。
しかし一般的に温度管理がしやすいとされるステンレスタンクはほとんど使用しない。
2004 年に建て替えられた近代的な醸造所には、旧式のコンクリートタンクが並んでいる。
容器が分厚く、大容量(50hl)のコンクリートタンクは、ステンレスタンクよりも急激な温度変化が起きにくく安定しているとのこと。
温度が高すぎる場合には冷却用の棒(のようなもの)を中に入れて冷やす。いったん温度が下がれば40 時間は一定に保つことができるため、常に冷却が必要なステンレスタンクよりもエコロジックだし、コストもかからない(ただし、コンクリートタンクは動かせないのと、一定量の液体が必要なのが欠点。)
シラーとムールヴェドルの上級キュヴェに関しては、量が少ないの
で台形の樽を使っている。
AOP リュベロンでビオディナミ農法を実施する生産者はここだけ。
流行りの色の薄いロゼは直接圧搾法で造るが、果汁を取るこの方法だと酵母のいる皮や茎との接触が少なく、発酵が進みにくい。そのため多くの生産者が酵母添加をするが、デメテールでは酵母添加が許されていないのでピエ・ド・キューヴを使用している。収穫の 10 日前に熟したブドウを摘んで、小さなステンレスタンク(このためにステンレスタンクがある)で醸し、発酵のスターターにしている。